増田真美子
日本のテレワークの難点
4月7日の緊急事態宣言発令により、多くの企業が、準備不十分のまま、出社禁止を決定、テレワークが急速に広がった。元々、東京オリンピック・パラリンピックの際の交通混雑緩和などを目的とした「テレワーク・デイズ2020」実施が予定されていたが、そうはいかなくなった。夏に向けて準備していたテレワークだが、急な対応が迫られ準備不足などの課題が浮上している。日本のテレワークにはどのような問題点があるのだろうか?
1.「情報漏洩への懸念」「紙」ベースで仕事をしている企業など、テレワークができない
手書き伝票、ハンコを押す稟議書、社内を行き交う書類。自宅できる業務とも言い難い。過去の書類のデジタル化には膨大な時間がかかるため、緊急なテレワークへの対応が困難である。一時的な原本保存としてスマホで撮影したり、スキャンした文字をデジタル変換できるスマホアプリで対応することもできる。
2. テレワークだと時間管理ができない
「自律的に仕事ができると上司が判断した社員だけにテレワークが許可される」という企業も少なくない。ICT(情報通信技術)ツールを使うことで、細切れの労働時間(子どもの世話などは仕事時間に算入しないなど)を管理できるシステムもある。以前よりテレワークを考慮して同システムを導入した企業に最も多い理由は「生産性の向上や業務効率の向上」と「ワークライフバランス」。ほかにも「仕事と育児の両立」や「介護離職防止」「非常時の事業継続」などが導入理由として挙げられている。しかしながら、今回は、緊急にワークスタイルの変更が必要となったため、システムが未整備常状態の場合、フレックスタイムでの仕事が可能でない限り、学校や保育所・託児所が閉鎖している地域の社員は、家事・育児を平行した時間内勤務のテレワークが難しいという問題がある。テレワーク時は、自己管理のもと、労働時間を重視するのではなく、自律的に効率的な仕事内容の重視が必要となっている。
3. テレワークで生じる「格差問題」
テレワーク導入率が高いのは、サービス業、製造業、金融業。これに対し、医療や教育、公益関連の企業は導入率が低い。これらの職場では、顧客(患者・生徒)との関係性が重要。実際に当事者と対面することが不可欠なため、一見すぐにはテレワークには向かない仕事といえる。しかしながら、フランスではオンライン授業、また医療現場ではオンライン診療も始まっているところを見ると、いずれは普及していくであろう。もちろん情報漏洩のリスクが高い業務にはテレワーク導入には一工夫が必要だ。テレワークの内容にも限界があり、遠隔化が困難な業務との、職種間、企業間、担当間での「格差」が存在するのは間違いない。しかしながら、今後のイノベーションが解決してくれるであろう。
解決策
企業がテレワークを導入する場合、本来であれば「業務の見直し」「テレワークをするうえでのルールやITの整備」「社員教育」といったプロセスを踏んで、トライアルを経てから社内展開するのが理想型であるが、緊急導入の場合、理想型では時間がかかりすぎる。東京テレワーク推進センターの湯田健一郎事業責任者は「緊急時ならではのポイントを押さえて迅速に導入を進めていく必要がある」と指摘する。具体的には「ITの整備を中心に据えて進めていくとよい」という。そのための5つのポイントとして(1)テレワークが可能な仕事を見極め、 (2)自社に合ったIT選び、(3)運用中のITをテレワークでも利用、(4) 複数のITを組み合わせて利用、 (5) 導入するITが複数ある場合、優先順位を付ける。「ITを導入すればすぐにテレワークに移行できる仕事を見つけて、そこから始めるとよい」なお「テレワークが難しそうな業種でも日々の仕事を整理していけば、移行できる仕事は見つかる」と湯田事業責任者はアドバイスする。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03840/
テレワーク(在宅勤務)で留意することとして、一般社団法人日本産業カウンセラー協会の産業カウンセラー 眞砂亜矢子氏は、その日ごとの業務を計画し、上司や同僚とのコミュニケーションを徹底し、個々にセキュリティを万全にする点を述べている。そしてできる限り出勤している時と同様に過ごし、運動を心がけることや集中が途切れたり煮詰まったりしたら、気分転換やリフレッシュを心がけるようにという。https://www.counselor.or.jp/covid19/covid19column6/tabid/512/Default.aspx
フランスのLes Echos Formationでは、孤独への恐怖や環境の変化に順応できるように2時間のウェビナー講座(有料)を行っている。例えば、『テレワークで落ち着いて効率的に行う方法』(4月10日) 、『テレワークによるマネージメント方法』(4月17日) 、『契約実行に対するCovid-19の影響』(4月20日) 、『M&Aトランザクションに対するCovid-19の影響』(4月21日) 、『デジタル器具による遠隔でのノウハウの伝え方』(4月22日) 、『自宅待機要請中のストレス解消方法』(4月23日) などに登録視聴できる。
http://www.lesechos-formation.fr/catalogue/formations-sectorielles/formation-distance.html
フランス全体にテレワークを促進するための政府のサイトteletravailler.frでは、テレワークの利点、およびセットアップの手順に関する情報を提供している。フランスとヨーロッパの公的および私的部門で法的側面からの情報も提供していてテレワークプロセスを学ぶことができる。
http://www.teletravailler.fr/observatoire/en-france
日本においても総務省がテレワークに関するサポートホームページで、総務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省などの省庁およびテレワーク協会が作成したガイドブック等を紹介している。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/furusato-telework/guidebook/index.html
日本のテレワーク普及は働き方改革へつながる
テレワークは、「制度の導入」だけでなく「業務の見直し」「システムの導入」「意識改革」など、働き方改革に繋がるので 「テレワークが完全不可能」とする業務を「テレワークでも可能な仕事」へと、大きく転換する機会でもある。今回の非常時テレワークで、多くのことを学ぶ。テレワークが更に発展すれば「会うことにより果たせる仕事の特異さと重要さ」改めて認識することができる。「プロセス」や「努力」といった業務過程が見えにくく、可視化されたパフォーマンスのみが評価の対象になってよいのか。仕事の様子が見えにくいため、これまでのような柔軟なジョブ・アサインが困難になる、などなど。これらの問題は、中長期的には、各自が果たすべき職務(ジョブ)や責任を計画的かつ明確に定め、これまでの曖昧な「総合評価」から「職務責任を果たせたかどうかという評価」へと変わることを促す。今、財界では「ジョブ型雇用への転換」が叫ばれているが、テレワークの急拡大は、日本の雇用や働き方を変革を急進されることは間違いない。因みに、教育分野に関しても、小中高学校まで、テレ授業を急速に普及させたのは目を見張るものがある!
フランス人の 「 ソリダリテ 」
ところで、テレワークは孤独な面もあるが、一方つながりへの欲求が強調され、ソリダリテ(連帯)意識が強くなる。フランスでは、3月14日に国民生活に必須なものを除いたすべての商店が閉鎖になり、託児所、小学校、中学校、高校、大学の休校が続いていた。17日には、住民の外出制限が実施された。自由な外出や、人々との交流を禁止されている今、フランス人たちは、連帯感により、様々な形で助け合い、応援しあっている。SNS上の「#solidarité」をつけた投稿からは、危機的な状況の中で、あらゆる助け合いや、医療機関への差し入れ、ボランティア情報が発信されている。また自由な外出が制限されて以降、夜8時になると、医療従事者、生活必需品販売関係者、ごみ収集などの日常の基盤を支える人々への感謝を込めた拍手を住民がバルコニーから送り続けている。またマンションによっては、若者が自発的に張り紙をして、買い物に行けない高齢者のために買い物を代行を呼び掛けている。更には、「出会いサイト」へのクリックが増えたらしい。また、エンターテイメントの分野でも自宅待機要請終了まで有料放送が一時的に無料公開されたり、オペラ、演劇やコンサートなどをネットやテレビで放送されている。日本でも、朝日新聞が有料コンテンツを一時的に無料公開にしたり、有料配信サービス、アーチストのライブ映像コンテンツ、子供向け学習支援サービスの有料コンテンツを無料公開を行っている。また、多くのタレントが、Youtube配信をスタートし、視聴者に自宅待機を呼びかけている。
CEFJ会員企業のIMACREA社(鈴木真吾社長、東京)は、国内外50,000名以上の登録者と共にテレワークを活用したアウトソーシングならびにコンサルティング事業を展開しています。テレワークについてもっと知りたい方は、IMACREA社にお問い合わせください。